乗り換え7分、実食4分。ホームの湯気には、新幹線が奪えなかった旅情が残っている。読者投稿の偏愛カタログ。
新幹線は速くなり、駅弁は上品になった。それでもホームの片隅の湯気には、昭和から続く旅情が残っている。読者「えきそば見習い」さんによる、渋い駅そば巡礼の記録である。
北海道・音威子府村。真っ黒いそばで知られた駅そばの名店は、すでに暖簾を下ろした。それでも巡礼者は跡地を訪れる。「もう食べられない一杯」は、記憶の中で無限に美味くなり続ける。これは駅そば界の聖地であり、供養である。
千葉県我孫子駅。そばの上に、そばより大きい唐揚げが2個乗る。バランスは崩壊しているが、船を漕ぐように食べる。かつて山下清が働いていた店としても知られる。おにぎりではなく唐揚げが名物になったのは、歴史の妙である。
和風だしに中華麺という、聞くだけなら事故のような組み合わせ。食べると発明である。終戦直後、傷みにくい麺を探した結果がこの形だと言う。制約が名物を生む。旅程の制約が旅を面白くするのと、同じ理屈がどんぶりの中にある。