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COLUMN

旅の最終目的地は、自分の家の風呂だった。

3週間の旅から帰った夜、蛇口からお湯が出た。それだけのことに声が出た。帰国した夜の湯船は、旅の最後のページである。

TEXT: MOLT編集部・K ILLUSTRATION: 線画置き場 ◷ 読了 約3分 2026.07.11
41.5°C — welcome back
41.5度。この国のインフラが毎晩やっている、静かな魔法。

旅の感想を聞かれて「風呂がよかった」と答えたら、それは自宅の風呂の話だった。3週間ぶりの自宅。蛇口をひねると、お湯が出た。それだけのことに、声が出た。

01

1日2リットルの世界から

砂漠では水は1日2リットルの配給で、山小屋ではシャワーは3分100円だった。順番待ちの列で、前の登山者の3分を数えながら待った。あの3分の緊張感を知ってから、無限に出る41.5度は、もはや温泉である。この国は、静かにどうかしている(良い意味で)。

日常のありがたさは、一度離れないと目盛りが振れない。
02

風呂は、旅の編集室

湯船に沈みながら、旅の記憶が順番に溶けていく。来なかったバス、通じなかった言葉、崩れたスイカの山。不便もハプニングも、お湯の中では全部「いい話」に変換される。人間の風呂には、そういう編集機能がある。旅は帰宅した瞬間に終わるのではなく、その夜の湯船で完成する。

03

次の出発の合図

では次はいつ行くのか。この風呂のありがたみが薄れてきた頃に、である。つまり、だいたい3ヶ月後だ。蛇口のお湯に何も感じなくなったら、日常の解像度が下がっている。それが出発の合図だと、記者は決めている。

— fin —
MOLT編集部・K旅の荷ほどきより先に風呂を沸かす派。湯船で旅の記憶を編集するのが締めの儀式。
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