退職を迷っていた元・広告代理店の彼が、メルズーガの砂丘で行った、人生の棚卸しの一部始終。
「会社を辞めるかどうか、2年悩んでいました。で、悩んだまま砂漠に来たんです」。メルズーガの砂丘、消灯後のキャンプ。彼は寝袋を持ち出して、砂の上に寝転んだ。
「東京では悩みが30個くらいある感覚でした。でも星の下で数えたら、3つしか思い出せない。仕事を続けるか、親に何て言うか、あと一個は忘れました。つまりそういうサイズだったんです」
「星が多すぎて、自分の計算が小さく見えたのかもしれません。あの空の下では、年収の差とか役職とか、等級表がバカらしくなる。帰りの飛行機で辞表の下書きを書きました。清書は、ちゃんと会社のデスクでしましたけど」。畏敬の念は、ときどき人事権を持っている。