旅じゃない。でも旅だった。カメラロールの奥、2022年8月から発掘された一枚と、その夜の証言。
2022年8月、金曜。飲み会の帰り、3人そろって終電を逃した。タクシーは高い、カラオケは満室、始発まで4時間。残された選択肢は、コンビニ前の縁石だけだった。
アイスを食べ、缶コーヒーを飲み、人生の話をした。終電を逃した瞬間、東京は無人島になる。帰れないという一点で、その夜の3人は遭難者であり、旅の仲間だった。誰かが「記念に」と言って撮ったのがこの一枚である。全員ひどい顔で、全員笑っている。
この写真は3年間、カメラロールの奥で冬眠していた。発掘して気づいたが、あの夜の記憶は妙に鮮明だ。計画された夜は忘れるのに、遭難した夜は残る。旅の法則は、山手線の内側でも作動する。